龍臣先輩は今日も意地悪
「…元々、半ば強引に龍臣の彼女になったのは水森さんだから」
「…霧崎先輩」
いつの間にか隣にいた霧崎先輩は私の背中をトンと押した。
「行ってあげてくれないかな、龍臣のとこ。あいつあれでも結構無理してたんだ。
水森さん、別れるくらいなら死ぬっていうから」
「っ、そんなの脅しじゃないですか」
龍臣先輩が別れない理由、昨日ごまかされたのはこれだったんだ。
何も知らなかったとはいえデリカシーのない発言だった。
「それだけ、あの人は龍臣に心酔してた。怖いくらいね。
龍臣ならきっと非常階段かそこらにいるから、あと頼んだよ」
「どうして私なんですか?霧崎先輩のほうが…」
「あいつよくわかんないとあるけどさ、咲結ちゃんには心開きつつあるから。初めてなんだよ、女に心開いてるの」
そんなこと言われたら行くしかなかった。
廊下に座り込む恋奈先輩の横を通過して、龍臣先輩の後を追う。
恋奈先輩に文句を言ってやりたい気持ちはもちろんあるけど、今は話を拗らせてる場合じゃないから。
龍臣先輩が弱ってるなら、たまには私が手を差し伸べてあげないと。
あの人には、たくさん助けてもらったから。