幼なじみの一途な狂愛
「そう…梨々が……」

「━━━━━━━!!?まさか、君が……!?」

「俺だよ。佐南 乙哉」

「そう……安心してよ、さっき“依願退職”してきたから。もう、石蔵くんの前には現れないよ。
君のおかげで、不倫がバレて妻はカンカンだからね!
海外に行くことになった。
僕は、入婿だから」

「そう…御愁傷様!」

「もう、いいかな?」
和多は立ち上がりながら言い、ドアに向かった。

そしてノブに手をかけて、一度振り返った。

「━━━━━━あ、そうだ」

乙哉が、和多を見上げる。

「彼女…石蔵くんのこと、ちゃんと見守ってあげてね」
「そんなこと、お前に言われなくても━━━━━」

「梨々香って、会社内じゃ……高嶺の花だよ」

「は?」
「僕は、上手く阻止してたけど……
今日からは、助けてあげられないから」
「わかった」

「じゃあね。
……………あともう一つ」

「まだあんのかよ!!?」
「僕ね……石蔵くんとセックスはしたけど、キスは“一度も”してないんだ」

「は……?」

「理由は、彼女に聞いてみてよ!」
そう言って和多は、後ろ手に手を振り、部屋を出ていった。


「どうゆう意味?」
スグルが言った。

「………」
「乙哉?」

「………まさか、梨々…!」

【めぐちゃん、彼氏が出来たんだって!】
【ふーん】
【キスがね……】
【ん?キス?】
【うん。チュッてしたらしいんだけど……全然甘酸っぱくなかったって笑ってた(笑)】

【へぇー】
【どんな感じかなぁ?】

【…………じゃあ、俺としてみる(笑)?】

【は?ば、バカ(笑)/////!!!】

【冗談だしー(笑)】

【それに、私……決めてるから!】

【は?何が?】

【だってキスは━━━━━━】



「梨々、まさか……本当に……?」
「乙哉、どうした?」
「あ、いや……」

「仕事、戻ろう!!」
「あぁ……」



そして一方の、梨々香━━━━━━━
「石蔵ちゃーん!」

及川(おいかわ)さん!おはよう!」
「ネット見た!?」
「え?ネット?」
「この会社のホームページ」
「え?ううん」

「和多課長!不倫してたんだってぇー!」

「━━━━━━え……?」
(う、嘘……バレ、た…?)

出社して、課長がまだ来ていないことに安心していた梨々香。
それも束の間……同僚で友人の及川が、スマホを片手に話しかけてきたのだ。

「見てよー!!
最低じゃない!!」
「あ、でも……私は……!!」

「え?石蔵ちゃん?」
「どうしたの?」

「え……?」
他の同僚も、梨々香を心配そうに見つめていた。

< 19 / 42 >

この作品をシェア

pagetop