幼なじみの一途な狂愛
「梨々香」
「え……啓介…!?」
次の日仕事終わりに会社を出ると、啓介がいた。

「ごめん、待ち伏せみたいなこと……」
「どうしたの?
帰って!こんなの、乙哉に知られたら……」

「梨々香!!」

「え?」
「なんで、俺と付き合ってくれたの?」


「だから、それは……」

「“初恋の人に似てたから”だろ!?」

「うん……」
「俺は利用されたの?」
「それは違う!!」

確かに乙哉を重ねていたが、それでも前に進もうと思って啓介と付き合ったのだ。

「私は、前を向いていきたかった。
啓介となら、生きていけると思ったから」

「でも、俺は!ずっと、梨々香が見えなかった。
いつも、薄いモヤがかかってて……」

「ごめんなさい……
どうしても、乙哉と重ねちゃって……」


「……………ねぇ、付き合ってよ」
「え?」

「ごめんなさいって言うんなら……悪いと思ってるんなら、今から付き合って!」

「ごめんね、乙哉…彼に言われてるの。
彼以外の人と会わないって!
ごめんね、啓介」

梨々香はその場を去ろうと、歩き出した。

でも、啓介に手首を掴まれた。
「啓介?」
「俺はまだ……」

「え?啓━━━━━━」
そしてそのまま引っ張られ、抱き締められた。

「梨々香を諦められない!!」


「啓介!!離して!!
お願い!!」
必死で押し返す、梨々香。

「梨々香…梨々香……」
そして顔を見て、頬を包み込んだ。

「お願……離し…」

「━━━━━━!!!?」
顔を近づけようとした啓介。
しかし、何かに気づいてゆっくり手を下ろした。

「啓介…?」
「婚約者だから…当たり前か……」
「何……言ってるの?」

「彼氏とは、キスしてるんだろ?」
「は?」

「俺には、させてくんなかったから」

「それは……」

「キスマーク」

「え?」

「彼氏、独占欲強いんだな!」

「あ……」

「なんか、今一気に覚めた……
そのキスマーク……ヤバいな!」

「え……?」

「“俺の梨々香に触るな!”って言われてる気がした」

「啓介…」

「ごめんな。
じゃあ……」
啓介は、後ろ手に手を振り去っていった。


梨々香も歩き出す。
フッと前を見ると……………



「梨々」



乙哉がいた━━━━━━━━


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