空は、もう曇天のようで。
違和感に気づいたのは小学六年生の時。

たしかに、私は好きな人ができた。

理由なんて野暮なこと、わざわざ鮮明に思い出そうとは思わないけれど。

ちゃんと大好きだったから。

だったなんて言い方じゃあ可笑しいか。

晴天の空は曇ってしまったけれど、傘を隠して歩いていこうじゃないか。


-


私は恵まれていた。

好きになった人は近所に住む一個上の前髪が少し長い男の子。

私の通う習い事の先生の息子でもある。

低学年の頃は同じ同級生と一緒にゲームをしたり、習い事の帰りに少し遊んだりもした。


これも全て、私が女性らしくなかったからだろう。


いざ面と向かって考えるとひどく胸が苦しくなるが、彼は紛れもなく私を異性として見てはいなかった。

所為がない、低学年のことだから、しょうがないけれど。


ただの友人。
この絆だけが私と彼を繋いでいた。

だからこそ、一緒に遊べたんだけどね。
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