慶ちゃんが抱いてくれない!



え?面と向かって答えるの?





恥ずかしくなって武蔵君から目を逸らして俯いた。





心臓……うるさい……。




私、武蔵君とキスした事あったっけ?
キスしてないのに好きになる呪いでもかかってるみたいだ。




「う……うん……」

「そっか……あのさ……俺、楓ちゃんの事好きなんだけど……付き合うとかどうかな?」

「えっと……」

「99年前にデートした奴より、俺なら楓ちゃんの寿命と大体同じくらいだと思うし……絶対楓ちゃんより先に死なないって約束するから!付き合ってください」

「ま、待って!はっきり言って私も武蔵君の事好き…だけど、ちゃんと気付いたの今日で、武蔵君も気付いたの最近だよね?今お互い気持ちが舞い上がってるだけかもしれないから……」

「舞い上がってる時に付き合うもんじゃないの?……それとも、やっぱり俺じゃ無理?」

「そんな事ないって……昔色々あったの!わかった、じゃあ付き合う(仮)はどう?」

「えー……それってどこまでして良いの?」



う……すごく不満そう……いつもは優しくいいよーって言ってくれるのに!



「えーっと?デートしたり?

「キスは?」

「絶対ダメ!絶対しないでね!?これだけは約束して!」

「……わかった。周りには付き合ってるって言っていい?」

「内緒でお願いします……散々真穂と慶次君の関係に口出ししてたのに武蔵君と中途半端な関係だなんて言えない!」

「言わなくても何となく察っすると思うけどね……まぁ、まだデート1回目だし、それでいいや。急ぎ過ぎちゃってごめん……じゃあ、帰るね。家着いたらまた連絡する」


武蔵君はそう言うと握っていた手をグッと引き寄せて背中に腕を回してギュッと抱き締めてくれた。
そして、離れると頭をポンポンと撫でてふわっと優しい笑顔で手を振る。


「またね」

「あ……またね……気を付けて帰ってねっ」



武蔵君が見えなくなるまで見送ってからハッとする。




抱き締めるのありなの……!?




とりあえず、とりあえずで……こんな事になっちゃった。




家に入ってお風呂にずっと昔にしまい込んだ魔女式の占いセットを持って入って、使わずに湯船に浸かりながらそれを眺める。




魔女の占いは曖昧部分が多くて、行動によっても最初に出た答えと違うものが出るし……お遊び程度のものだ。結局は自分次第って事なんだけど。





……って占ってどうするのよ。




するとバスタブの蓋の上に置いていたスマホが鳴って速攻で取った。
勿論武蔵君からで、家に着いた連絡と……寝る前に声聞きたいから電話していいかとの内容のメッセージが届いていた。




んんんっ……声聞きたいとか武蔵君可愛い……。と、とりあず………今はまだこのままで……。



キスの事は念押しておいたし大丈夫だと思うし……





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