唯くん、大丈夫?
咲優に訝しげな目で見られながらバタバタ右往左往して無駄に時間を消費していく。

あぁ〜もう時間がない!!

やんちゃな癖毛をどうにかするのを諦めた私は、ひとまず髪をまとめてよれよれのシャツにショーパンデニム、そこにあった薄手のパーカーを羽織って玄関に急ぐ。



「どこ行ふの」


歯ブラシをくわえた咲優が玄関前で私の背中に言う。


「えっと…どこだろう?でも30分くらいで戻る!多分!行ってきます!!」


眉をひそめる咲優を残して、私は急いで玄関のドアをあけた。




「…おせーよ」

「!」




唯くんが、バイクに気怠げに腰掛けて私を見ている。



無地のTシャツとデニムに黒のマウンテンパーカーというシンプルな服装なのに、どうして雑誌の1ページみたいになるの…?



かっこよすぎる彼氏に腰が砕けた私は、よろけてガシャン!と門扉にぶつかった。



「何してんの…」



唯くんは呆れた声を出しながら、私の後ろの咲優に目を向けた。




「…どーも」




唯くんが少しかしこまって咲優に向かって会釈すると、

咲優も慌てて「ふご、あ、ども…」と歯ブラシを取って会釈する。



平凡な羽根村家の民と

対照的なキラキラ上級国民の唯くん。

改めてこの図式に訳がわからなくなる。

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