唯くん、大丈夫?
お父さんが涙をグシグシ拭いてると焦げ臭い匂いがしてくる。

お父さんがハッとしてキッチンに駆け戻った。


「あぁ!俺の目玉焼き!あぁ~!」


「…代わりましょか?」


「…いえ。がんばります。やらせてください。」




目の色が変わったお父さんに「集中したいから話しかけないで」と言われて、私はひとまず食卓に並んでるスープをいただくことにした。




湯気がふわふわたちのぼってるスープに、口をつける。




「………うみゃぁ~…」






はい、昇天しました。






お世辞にも料理上手とは言えないお父さんだけど

スープだけはとってもおいしい。


いつぶりだろう。あったかくって美味しいなぁ。


冷えたからだが徐々にホカホカになる。








『料理は愛情。これって本当なのよ。』







いつだかお母さんが言った言葉を思い出した。




『大好きな人に食べてもらいたかったら、一生懸命作ろうと思うでしょう?そうすると自然にその人にとって美味しい味になるのよ。』




…最後にお母さんが作ってくれたご飯はどんな味だったかな。

思い出せないな。




私は身体に対して小さすぎるエプロンをつけたお父さんの背中を見ながら、お父さんの愛情をもう一度すくって口に運んだ。



「…美味しい。」



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