唯くん、大丈夫?
一本刺しの小さなピンクの胡蝶蘭。




「懐かしい!これ、私が入院した時に美琴、持ってきてくれたよね?ピンクの胡蝶蘭!」


パウンドケーキを口に頬張ろうとしていた美琴が、ピタッと動きを止めた。


「胡蝶蘭ってたくさん咲いてると豪華なイメージだけど、このぐらい小さくて一本だけだと可憐な感じで可愛いよねぇ。美琴から貰ったとき嬉しかったなぁ。あっ、あの時みね君がさぁ、」



「…あれ、唯だよ。」



「え?」










今、なんて言った?






「あの時のピンクの胡蝶蘭は、唯が持ってきたの。」



美琴は理解が追いつかず固まる私をじっと見据えて言う。




「……どういうこと?」




わたしは震える手を誤魔化そうと、スカートの裾をぎゅっと握った。
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