唯くん、大丈夫?

「ハァ、ハァ、ハァ…」



2人の荒い呼吸音が、人気のない廊下に響き渡ってる。

超近距離の唯くんがやけに艶っぽい顔で、懸命に息を整える。

3日ぶりの唯くんはやっぱりかっこよすぎて、直視できない。



「ど、いて、」

私は呼吸が乱れる中、必死で声を発した。



「…なんで逃げるのか、教えてくれたらどく」

「…」

「……好きじゃないなら、ちゃんとフッて」


らしくない言葉

思わず見てしまった唯くんの顔は全然無表情なんかじゃなくて


「嫌ならもうしないから…ちゃんと言って…?」


すごく切なくて、弱々しくて、泣き出しそうだった。


「そんなわけ…ないじゃん…」


目が離せない


「好きじゃないわけ、ないじゃん…」


私の言葉に唯くんが瞳を揺らした。

そして、はー…と安堵のため息をつきながら私の肩に顔をうずめる。


「…じゃあなんで逃げるの」


切羽詰まった声。

唯くんが、追い詰められてる。

…私のせいで。



『優花の大好きな人、元気にしてあげられるのは優花しかいないんだよ』



「……」



私は顔を手で覆ってから深呼吸して、心の内を打ち明けはじめた。


「…こわ、くて」

「怖い?」

「こうやって、唯くんに見られるのが、怖くて、逃げてた」

「…どういうこと」


唯くんは私を見るのをやめてくれない。
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