ずっと探していた人は
「え、どうしたの」

週末の日曜日。

涼くんからデートをしようと久々に誘ってもらい、私たちはショッピングセンターに併設されている大きな観覧車の下で待ち合わせをした。

少し早めについた私を待ち構えていたのは、伊達メガネをした涼くんだった。

「どう??」

私の驚きは想定内だったのか、涼くんはにこっと笑っておどけてポーズをとった。

「びっくりした」

正直に感想を述べると、周囲の人に気づかれないためだと涼くんは言う。

「伊達メガネぐらいじゃモデルオーラは消せないよ?」

「意外と伊達メガネ1つで雰囲気って変わるもんだよ?」

「そんなことないと思うけどなあ」

納得しない私に、涼くんは、まあ見ててみなよ、と笑った。

「お、このパスタ、おいしい!」

涼くんが選んだのは、魚介類のパスタ。

「一口食べたいっ!」

軽く開けた私の口に、涼くんがフォークに巻き付けたパスタを運ぶ。

食べてみると、まずは麺のもちもち具合に驚いた。
手打ちで本格的な生パスタ、と謳っているだけあり、普段食べている麺よりもずっと、もちもちしている。

それに加え、噛むたびにそれぞれの魚介の旨味がじゅわっとあふれ出して、麺と絡まる。

「ほんとだ、おいしいね」

涼くんが言った通り、伊達メガネだけでも結構雰囲気は変わるみたい。

涼くんのことをチラッと見る人もいるけれど、まだ誰にも声はかけられていなくて、私たちは2人の時間を楽しんでいた。

私の言葉に、涼くんは満足気に笑う。

本当にいつみても完璧な笑顔。
非の打ち所がないなあ。

「ん? どうかした?」

涼くんに声をかけられて、やっと自分が涼くんをじっと見つめていたことに気が付く。

「あ、なんでもない」

見惚れていたなんて正直に言えるわけないし。

慌てて視線をそらしたけれど、涼くんはわかっていたようで、ふふっとやわらかく笑った。
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