ずっと探していた人は
「は~~、本当にもー、あー……」

私は大きくため息をつきながら、覚悟を決める。

「もーわかったよ」

普段明るい、明るすぎる徹のつらそうな姿に耐えきれず、思わず徹の願いを私は受け入れた。

徹もそのことを知っていて、この表情をしたのだろう。

私が承諾すると同時に、元の明るい表情になった。

「ありがとーっ!!」

どういたしまして、そう言おうとしたのを遮ったのは、徹だった。

「おーい、大橋、加恋が勉強教えてくれるってよ!!」

徹が嬉しそうに、教室の隅で野球部員の中川くんと一緒にお弁当を食べていつ大橋くんに手を振った。

「ちょっと、徹!」

徹の腕を無理矢理さげる。

「どうして大橋くんもなのよ」

「え、だってさっき、教えてくれるって言ったじゃん」

「徹に勉強を教える約束はしたけど、大橋くんを教える約束はしてないって」

小声で抗議した後にチラッと大橋くんを見る。

すると大橋くんも席に着いたまま様子をうかがうように、こちらをちらちら見ていた。

「なんでだよう、ちゃんと俺たちに勉強教えてくれって言ったじゃん」

徹が平然と言い返す。

「俺たちって…………」

そういえばさっき……“俺たち”って言ったような気もする…………。

「それに、大橋を教えられない理由でもあるわけ?」

徹が不思議そうにこっちを見る。

「ないんだろ? じゃあ決定な!」

おーい!と残りの野球部員2人に手を振る徹を、私は黙って横目で見ながら、もう一度ー昼休みだけで何回ついただろうなと思いながらー深くため息をついた。

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