青に染まる
 淡い色のTシャツにだほっとした作業ズボン。そこに緑色のエプロンをつければ、「花屋のお兄さん」という僕の完成だ。

 ……三十五でお兄さんもないか。

 でも、あまりおじさんと言われたことはない。髪色を抜けば僕は実年齢より幾分若く見えるようで、同年代からは羨ましがられる。

 あとはおそらく日本人めいてない僕のこの目が、年齢不詳にしているのだろう。

 鏡に映る自分の目に(たた)えられた色は、綺麗な(うぐいす)色。

 これで本当に記憶がなんにもなくて日本語が喋れなかったなら、僕は自分が何人なのか悩んだことだろう。そして適当なことを吹き込まれれば、簡単に外国人になっていたにちがいない。

 ──と冗談みたいなことを、毎朝思っている。

 国際化社会が広まりつつある世の中だ。そのうちこの目も珍しくなくなるだろう。
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