敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
もう祖父母はどちらも八十歳を超えているから、元気なうちに顔を見ておきたいとは思うけれど……。

『ちいちゃんはまだ、飛行機が怖い?』

祖母に問われ、口ごもってしまう。

『まどかの事故はネパールで、乗員が五人ほどの小さな飛行機だったし、日本の大型旅客機とは違うわ。とくにここ一年は世界のどこでも大型旅客機の墜落事故は発生してないんだって』

まどかとは伯母のことで、祖母にとっては長女だ。祖母が航空機事故について詳しいのは、今も深く娘を思っているからだろう。

私とは違い、飛行機について正しく知ろうとしている姿に胸を打たれた。

大地さんと結婚してから、私も少しずつ意識が変わってきてはいるけれど、まだまだ立ち止まったままだ。

束の間、沈黙が流れる。

『実はね、今おじいちゃんが寝込んでいるの。このままじゃ……』

「このままじゃ……なに?」

思わず声を潜めた。

母からはなにも聞いていないけれど、もしかして祖父は病気なのだろうか。

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