日本から出られない!
前くんの家族や前くんとは、幼い頃は休日になるたびにどこかへ一緒に遊びに行ったり、バーベキューやピクニックを楽しんでいた。

「前くん、うちの桜のことをお願いね」

しっかりしている前くんにお母さんは私のことを全部任せ、前くんのお父さんは「ちゃんと桜ちゃんを守るんだぞ」と真剣な顔で言う。

それに対して、前くんは一つも嫌な顔を見せることなく、「桜、あっちで遊ぼう」と笑って言ってくれた。学校で人気者の前くんを独り占めできるこの瞬間が、幼い頃は好きだったんだ。

前くんとは、小学校が同じでクラスも六年間一緒。だからか、いつも前くんは私と一緒にいて、色々助けてくれた。

「ここの計算は、こうするとわかりやすいぞ」

「おい、揚げパンのきな粉が口についてる」

「ちゃんと前見て歩けよ。転ぶぞ」

「お前って、俺がいないとダメだよな」

前くんが助けてくれるのは当たり前になっていて、前くんがいないとダメな子みたいに周りから見られていたから、私は何も思わなかった。でも、おかしいと中学生になると思い始めたんだ。
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