オフィスラブは突然に〜鬼部長は溺愛中〜
 響は、軽々と柚を抱き上げる。

「大丈夫?」

「はい。思っていたよりかなり軽いです」

「そうね。小柄だしほっそりしているものね。でも、そのまま正面玄関を出ると目立つわよ」

「…」

 柚を連れ帰る事で頭がいっぱいで、目立つ事など考えていなかった。柚は、昨日兄が迎えに来た所を見られ、彼氏がいると勘違いされたばかりだ。オフィスビル内でも、柚は有名だと聞いた事がある。

「向かいのマンションなら地下駐車場の出入口から出たら?私もそこまでは付き添うわよ」

「そうですね。その方が、マンションの入口に近くて助かります。お願いします」

 地下の出入口はセキュリティの問題で、基本は車の出入しか出来ないが、警備室で頼めばなんとかなるだろう。両手が塞がる響には有難い。

「じゃあ、行きましょう」

 この時間のエレベーターは混み合っているだろうと思っていたら、俺達の知らない地下へのエレベーターがあるらしい。

 巨大なオフィスビルは働く人の数も多い。必然的に医務室を利用する人も多いため、緊急性を要するときのため、地下駐車場へのエレベーターが用意されているらしい。


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