オフィスラブは突然に〜鬼部長は溺愛中〜
 オフィスが沢山入るこのビルは、エレベーターも低層階と高層階用に四基ずつあるが、ピークの時間帯は満員だ。

 今は、ピークを少し越した時間で誰も乗っていなかった。そして、途中で止まることなく一階に到着した。

 柚は、周りに目を向けることなくビルの出入口に向かう。すると目的の人物は、ビルの入口近くに立っていた。長身の柔らかい雰囲気の可愛い男性。スマホを見ていて本人は気づいていないが、周りの視線を集めている。柚には見慣れた光景だ。どこに行っても目立つのだ。

「楓」柚の呼びかけに顔を上げた。キャッと近くに居た女性から黄色い声が上がる。いつもの事ながら目立つ楓に、柚は内心ため息をつく。

「柚、お疲れ」ニパッと可愛らしく笑う楓に周りからは更に黄色い声が上がる。

「楓、目立ってるから早く行こう」

 楓を急かし、オフィスビルを出る。見られて困る事は全くないのだが、目立ちたくはない。けれど、目立ちたくない柚の思いと裏腹に、その様子を『ユニバースエージェント』の社員に見られていた。




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