レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
息をするのがやっとだった。声を殺して、部屋の外に伝わらないように。
それでも、クチュクチュと厭らしく湿り気のある音に鼓膜が揺らされて、持ち上げられた腰に強く打ち付けられた。
ねっとりとした汗に熱を持った体温。彼の悲しみと怒り、そしてどうしたらいいか分からない戸惑いが伝わってきて、私の頭もくらくらと意識が曖昧になってくる。
憧れて、欲しくて堪らなかった筈の物モノは理想が膨れあがって、いつの間にか形が変わってしまったのだろうか。
キラキラした初恋を宝物の箱の中に入れて、鍵をかけて私だけの物にしたかった。
親が決めたから仕方がないと、見えないふりをして、自分の都合の良いように。立場を利用して繋ぎ止めようとした。
いっそのこと、はっきりと言葉にしてくれれば良かったのに。
成央さんの小刻みな息が「んっ、」と苦しそうな歯切れの悪い音を上げた瞬間、その激しさは止まり、背中に彼の重みがのし掛かってきた。
そのまま、呼吸が整わないまま2人で床倒れ込む。
あの夜の日以来、はじめて成央さんと身体を重ねた───。