イケメン総長は、姫を一途に護りたい
これは、俺に逆らった恐怖心からではなく、勝負の結果に納得できない悔しさからだった。


「お前が全力を出して負けたのなら、オレはなにも言わねぇよ。…でもな。わざと負けて、しかも咲姫をかけた大事な勝負だったっていうのに、…お前なにしてんだよ!!」


普段、物静かなカオルが…声を荒らげている。


肩でハァハァと息をするほど感情が高ぶっていて、こんなカオルの姿は初めて見る。


「…千隼。お前、咲姫に惚れてんだろ…?」


カオルが俺に訴えかける。


「初めて、好きになった女なんだろ…!?」


まるで、俺の心に語りかけるように。


俺は黙って、つかまれていた胸ぐらの手を振り解くと、カオルに背中を向ける。



――そうだよ。

カオルの言う通り、咲姫は俺が初めて好きになった女だ。


小柄で、どこか危なっかしくて。
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