Mazzo d'amore
「居ないね」

「まあいつも居ないからね」

「なんだそりゃ」

「あはははは」

「おもしろいねー」

私達は笑った後、おばあちゃん家のポストに入れる為、カバンからお手紙を出した。

「お手紙入れよー」

「うん」

ポストに投函し、私達は来た道を戻り始めた。

「あっ!」

ズシャー

菜音くんが盛大にコケてしまった。

血は出てなかったが痛かったようで菜音くんは泣き出してしまった。

「いたいよー!うわーん!いたいよー!」

「どこが痛いの?心春が撫でてあげるね」

泣き止ませようと必死になり、時間はかかったが少し落ち着きを取り戻させた。

その頃にはかなり薄暗くなってきていた。

「もうやだ」

菜音くんはぐずりだした。

「大丈夫だから、大丈夫だから、ね?」

私は菜音くんを励ましながら手を引っ張って歩いて帰った。

それでも菜音くんはいやいや言いながら座っては立ち上がって歩いてを繰り返し時間は行きよりもずっとずっとかかった。

帰る頃には街灯も付きあたりは暗くなっていた。

家の付近では私達が帰って来ない為、親達が探していた。

泣きながら歩く菜音君の泣き声からなのかりんりん震えて鳴る鈴の音が聞こえたからなのか遠くに居た親達が気付き駆け寄ってきた。

「どこ行ってたの?勝手に居なくなってダメでしょ!あぁ、ほんと良かった」

菜音くんのお母さんはぎゅっと抱きしめていた。

「ぼ、ね!お手紙がっ!おばあちゃん居なくって!ヒック…クローバー見つけたんだけどっ…ごめん…なざぃ」

「うんうん、そうね!大変だったね。今度から勝手にどっか行ったらダメだよ?わかった?」

慰める菜音くんの母に

(今の菜音くんが何を言ってるかわかったの?)

幼きながらに思ってしまった。
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