Mazzo d'amore
こんな奴が父親だなんて憎い憎い憎すぎる。

「うがぁぁ!うがぁぁぁ!」

私は自分の手首を爪でかきむしった。

自分の体にこんな父親の血が流れてると思ったらおぞましく感じ、一滴でも体から血を出そうとしたのだ。

「京香!京香!落ち着いて!」

「京香ちゃん!やめて!傷付けると体が痛いから!」

ぐしゃぐしゃになる感情で暴れ狂う私をおじとおばは必死に抑えてくれた。

「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい」

「京香は何も悪くないんだから大丈夫」

謝る私を慰めて一緒に泣いてくれた。

そして、今回事件を起こした相手の怪我をさせた中に幼き少女も居た事からネット民の怒りが爆発し、すぐに個人特定がされた。

そして、私も特定された。

いくら父と私は関係ないと言っても父と娘なので関係なくはない。

学校に行くも白い目で見られるようになり、学校でイジメが始まりとてもじゃないけど通える状態でなくなった。

私は高校を辞め、家を出る事とした。

後、半年通えば卒業だったのに…

父さえ居なければ平和だったのに…

「良いんだよ、ずっと居ても」

「ううん。仕事で働かせてあげるからおいでって話しされてて、今までありがとうございました」

そして私はお世話になったおじちゃん達に深くお礼を言って家を出た。

そしてバスで移動中、父の事をずっと思っていた。

(死んでくれ死んでくれ頼むから死んでくれ)

恨みつらみを願えば願う程、バスの窓に映る自分の顔が大嫌いな父の顔に何処となく似ていてバスの中、何度も泣いた。

(なんで…いつまでも私を…こんなにも…苦しめる…)

おじとおばには行くあてはあると言ったが本当は何処にもなかった。

私は嘘をついた。

例え自分がこの先どうなろうと未来が見えなくてもこれ以上あの二人に迷惑をかける事などできなかった。

行く宛もなく乗り込んだバス。

私は私を知らない場所に行こうと東京に行く事にした。
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