Mazzo d'amore
「………私に合わせて無理して頭丸めなくても良かったのに」

旦那が五厘の坊主にした。

「共に戦おう!生きる為に!」

ニカッと白い歯を見せて笑顔をくれる旦那に本当にこの人と結婚して良かったと心から思った。

光太郎も心春もずっとずっと愛してる。

心春が高校3年生になり当初、医者の言っていた目安の年数は経過したがもう長くない事は私自身わかっていた。

いつ命を失っても後悔しないよう必死にこれまで生きてきたつもりだがそれでもやはりいざ自分の命に終わりが見えるとそれは怖くて怖くて。

心春が成人するまで。

心春が結婚するまで。

心春の子供を一目見るまで。

心春の子供を両手で抱っこするまで。

少しでも一日でも一時間でもと長く生きたいと心から願った。

本当はまだまだ生きたかった。

あなたの成長をもっともっと見たかった。

「お母さん…お母さん…」

「今までごめんね。ずっと隠してて…怖いお母さんでごめんね。心春の事ずっと応援してるからね、ありがとう」

そして心春の18歳高校3年生の夏、余命3年と言われてた相葉京香の生涯は幕を閉じた。

カランコロン

今夜もMazzo d'amore(マッツォダモーレ)の扉が開いた。

「Mazzo d'amore(マッツォダモーレ)はイタリア語で愛の花束。お母さんが100本の花束でプロポーズされたのが心春ちゃんのお店の店名の由来だったんだね」

お店に訪れた男性に私はニコリと微笑んだ。

「ずっと母はお店を出すのが夢だったので…」

「そうだったんだね。お母さんもきっと喜んでるね」

今宵も母を思い私はお店を開ける。

お店の後ろで私と一緒に写る笑顔の母の写真が眩しく輝いてた。
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