Mazzo d'amore
「どうするの?菜音くんは世界にも挑戦するの?」

明菜さんが菜音に問いかけた。

「そうですね、やるからにはやっぱ世界一を目指そうかなと」

「世界は強者だらけだけど応援してるから頑張ってね」

旦那はキックボクシングだけじゃなく最近、寝技なども有りの総合格闘技も始めた。

新しい挑戦に中々上手くいかないで大変そうだがそれでも本人は充実した生活を送ってるようだった。

カランコロン

「いらっしゃいませ」

「あ!稜くんだ」

「お兄ちゃん遅いよ!」

「こんばんは!遅くなりました!つか、俺座る所ある?」

「ここここ!空いてるよ」

菜音が自分の隣の空席を指差して手招きした。

「ねぇねぇ、所で俺のお酒は?」

菜音が私に問いかけてきた。

「はい、じゃあこれ」

そう言ってホワイトラムにライムと砂糖をシェイクしたお酒を出した。

「なんてお酒?」

「ダイキリってお酒。これからもよろしくね」

「へぇ、美味しそう。うん、よろしくね」

菜音はごくごくと飲みご機嫌になった。

「心春は飲まないの?」

「私、飲んだら仕事にならなくなるから」

ここのママはお酒は飲めない。

けれどそんなお酒の飲めないママの出すお酒に今日もみんな酔いしれる。

「いいなぁ、菜音。こんな可愛い人が嫁なんて羨ましい。歳下ダメだったんじゃないの?」

ビールを片手に稜くんが聞いてきた。

あの日、高校卒業した年の4月1日のエイプリルフール。

『ごめんなさいっ』

『な、なんで!?今の流れはOKのはずじゃん!』

『歳下はダメなの』

旦那から告白された時、私は嘘をついた。

「歳下はダメですよ………旦那以外は」

『さしすせそ』が上手に言えないママのお店に今宵も多くの人が集まる。

営業は週末のみですので悪しからず。

みんなが笑ったり泣けたり、楽しく集まれるお店。

カランコロン

「いらっしゃいませ」

Mazzo d'amore(マッツォダモーレ)

本日より開店です。

【終わり】
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