恋も推しごと〜私の推しがふってきました〜
第5章 私の神様


 なんと、譲ってもらったチケットは神席で、この間ほどとは言わずとも、アリーナ席で前から5列目のど真ん中だった。


 譲ってくれた人はとてもいい人で、仕事で行けなくなってしまい、譲り先を探した直後に私がメッセージを送ったらしい。

 席も良かったから、倍額以上払うことを予想していたのに、まさかの定価での取引だった。


 私がその人に最高に感謝したのは言うまでもない。――そして、今……最後にするからとステージの上をひたすら見つめていた。


 瞬きするのも勿体なく感じるくらい、熱い視線を送りつづける。


 怜也くんがこのたくさんの観客の中で、私に気づくことはないだろうけれど、この光景を忘れたくないと思った。



「……次でラストの曲です。この曲は今日初めて歌います。……俺には大切な人ができました。だけど、一緒にいることができなくなってしまった……」



 ラストの曲の前に始まった言葉に、私たちファンはただ聞き入っていた。

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