イタリアから出られない!
「あ、あの!困ります……」

そう言ったのだが、男性はどう解釈したのか、「大丈夫ですよ」と言いながら顔を近付けてくる。

キスされる、と目を固く閉じたのだが柔らかな感触を感じることはなく、「ねえ、この子嫌がってるんだけど」と低い声が聞こえてくる。

私がそっと目を開けると、ナンパをしてきた男性よりも、ずっと華やかな顔立ちの男性が私と男性との間に大きな手を入れて壁を作ってくれていた。明るめのブラウンの髪に、エメラルドのような緑の目、白い陶器のような肌は傷一つなく綺麗だ。着ているスーツは高級ブランドのもので、お金持ちなんだと一目でわかる。

「す、すみませんでした!!」

華やかな顔立ちの男性が思い切り睨むと、男性は私を放して逃げ去っていく。私はベンチから立ち上がり、頭を下げる。

「ありがとうございました!あなたが来てくれなかったら、私は今頃……」

好きでもない男性に唇を奪われていた、その光景を想像すると背筋がゾッとなる。男性は私をジッと見つめた後、「助けられてよかったよ」と微笑んだ。
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