俺様ドクターの溺愛包囲網


姉というより、私のことを友達かなにかと思っているのだろう。

「そもそも、要と俺は本当の兄弟じゃない」
「へぇ……って、えぇー!?」

本当の兄弟じゃないって、それって……!しかもそんな爆弾発言を、こんなところでサラッと言っていいものなのだろうか?

「別に隠してるわけじゃないけど、知ってるやつはほとんどいない」

どうりで似てないはずだ。顔も性格も、価値観もなにもかも。だけどいったいどういう事情で?

勝手に憶測を浮かべていると、先生が私の想像をはるかに超えることを口にした。

「俺は母親を早くに亡くした。父親は今の院長だが、俺の母親はあいつの二番目だった」
「そ、それって……」
「愛人だったんだよ」

愛人……。もしかして先生はすごく特殊な環境で育ったのでは?

「母親が亡くなったとき、俺はまだ中学生だった。身寄りもなかった俺は施設に行くことが決まっていたんだが、ある時、親父が迎えに来て養子になった」

目を伏せ、記憶を引っ張り出すようにして言葉を紡ぐ。その横顔を見ていると胸が痛くなった。まさか先生がそんな特殊な環境で育ったなんて思いもしなかった。

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