(続編)俺について来い〜俺様御曹司は生涯の愛を誓う
それから俺は会社に寝泊まりする事になった。

毎日、静香と翔太に会えないのは寂しいが、静香は俺と一緒にいる事に
緊張するみたいだ。

翔太とはすぐに打ち解けられた。

俺は荷物を持って会社に向かう時、翔太に「ママを頼んだぞ」と言って
静香を託した。

「大丈夫だよ」

翔太は翔太なりに色々思っているだろうに、物分かりの良い子で助かっている。

そんなある日、会社で大きな契約の話が持ち上がった。

取引先の会社は大手のホテル経営の会社だ。

この契約が成功すれば、真壁不動産は大口の顧客を手にすることが出来る。

俺は毎日徹夜状態が続いた。

新しい秘書はよく働いてくれる女性だ。

金山百合絵、二十八歳。

俺が毎日カップ麺で食事を済ませていると、まるで母親のように
「そんなものばかりでは栄養が偏ります、奥様に食事を差し入れて頂いたら如何でしょうか」
と小言を言ってくる。

俺は静香の入院の事は話してあったが、無事退院のみで、記憶障害については誰にも話していない。

妻と子供がいるのに、会社で寝泊まりしてカップ麺ばかり食べている俺の食生活に疑問を抱いているようだ。

そんな矢先、取引先へ出向くためにスーツが必要になり、静香に会社まで持ってきてくれるように頼んだ。

「静香、お疲れ様、変わりはないか」

「はい、翔太が真壁さんに逢いたがっています」

「そうか、今忙しいから今度時間作ると伝えてくれ」

「分かりました」

「ちょっと、静香に頼みたい事がある」

「何でしょうか」

「俺の寝室のクローゼットの左にあるスーツを秘書の金山が取りに行くから、
出して置いて欲しいんだ」

「スーツですか」

「そう」

「私が届けましょうか」

静香から思いもよらぬ言葉が出てきてちょっと驚いた。
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