『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
おなかも満たされたところでシャワーを浴び、腕と顔にできた傷の消毒をしてもらい、捻挫した足に湿布をしてもらった。
さすがお医者さん、手際が良くてあっという間に包帯を巻かれていた。

「足を動かさない方がいいから、真理愛がベットを使うといいよ」
「えぇ、私はソファーでいいのに」
「ダメ、けが人だろ」
「じゃあ、敬さんもベットで寝ましょうよ」

深い意図があって言ったわけではない。
きっと明日も仕事で忙しいはずの敬さんに、少しでも体を休めてもらいた。
ただその思いだった。

「バカ、一緒になんか寝れるか」
顔を真っ赤にして怒る敬さんが、なぜかかわいい。

「いいじゃない。それとも襲いそう?」
「バ、バカ野郎。真理愛みたいな子供相手にそんな気になるかっ」
「ふーん、じゃあいいでしょ」
言い切った私に、モゴモゴと敬さんは黙り込んでしまった。

結局、寝室の狭いシングルベットで二人背中を合わせて眠ることになった。
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