『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
「じゃあ、私はこれで帰ります」
「ああ、気を付けて。寄り道せずにまっすぐ家に帰るんだぞ」
「はぁい」

まだ朝の7時だと言うのに、真理愛は帰って行った。
外泊をしてしまった女子高生はきっと叱られるんだろうなと思うとかわいそうな気もするが、真理愛自身が望んだことだから仕方がない。
俺は何も言わずに見送った。



さあ、俺も今日は早めに行こうか。
昨日はかなり混んでいたし、当直も若手や研修医ばかりだったからきっと大変だったはずだ。
業務も溜まっていることだろうから、できれば手伝った方がいいだろう。



マンションから病院までは徒歩で10分弱。
裏道を通って行くからわりと早く到着する。
逆に車を出そうとすると、大通りまで出て病院の正面をぐるっと回っていくから早くても15分はかかってしまう。
だから、普段は徒歩での通勤を心掛けている。
もちろん用事のある時は車で通勤するが、かえって不便なことが多い。
ただ、今朝は珍しく車を出した。
理由は、真理愛のことが気になっていたから。
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