若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
21.
「社長、楽しそうですね」

 水曜日の午後。
 張り切って仕事を片付けていると、秘書にそう声をかけられた。
 別に書類の読み込みだったり決裁が好きな訳じゃない。だけど、気合いを入れる理由は響子さんに会う時間を確保するためだ。この後に待っているご褒美を思い浮かべれば、仕事だって楽しめるというものだ。

「ですが、少し休憩してください」

 とデスクにコーヒーが置かれた。

「ありがとう。気が利くね」

 時計を見ると間もなく十六時。一時間ちょっと集中していたか?
 積み上がった仕事の山も大分低くなっている。この調子なら定時には会社を出られるだろう。

「今日もデートですか?」

「その予定」

 そう言った僕の顔はそんなににやけていただろうか?
 秘書の視線がやたらと生暖かい。

「えーとですね、夜の予定ですが、今後は勝手に入れない方がよさそうですね?」

「あ、そうだね。これからは、入れてもらっていい日を教えるから、できるだけ、そこに入れるようにして欲しい」

 これまでは、空いている日なら前後の予定を見ながら、適当に入れてもらっていた。週末のゴルフや出張前泊なども含めて、これからはできるだけ響子さんのシフトに合わせて入れて欲しい。

「何曜日はダメとかでしょうか?」

「どうかな……曜日だけでは決まってない気がするけど、今度聞いてくるから、待ってて」

「彼女さん、夜にお仕事されてらっしゃるんですね?」

 ん? 夜の商売と勘違いしてる?
 いや、「夜にお仕事」だと、他にも色んな職業があるか。
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