若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「いつがいいかな? 最短でいつだろう? いや、まず籍を入れて一緒に暮らし始めて、式は落ち着いてからでもいいよな?」

「……社長、声出てますよ。そして、顔にやけすぎです」

「ん? ああ、そうだった? ……響子さん、結婚式とか興味なさそうだけど、やっぱりウェディングドレス姿見たいし、やるよね。結婚式か……」

 思わず独り言を続けたけど、秘書はもう何も言わずに僕が考え終わるのを待ってくれた。
 響子さん、そう言えば、ご両親がいらっしゃらなくて、頼りになるような親戚もいないんだった。
 僕の方は仕事関係で相当な人数を呼ぶことになる。近い親族は少ないけどそれなりにいる。
 ……ちょっと響子さんの気持ち、しっかりリサーチした方がよさそうだ。忙しい仕事だし、同僚だって医者なんだから全員出席とかは無理だろうし。友達とか……多そうなタイプにも見えないし。

「最短でいつぐらいなら可能?」

「え? ……あ、確認しておきます!」

「頼む」

「ところで、彼女さん、響子さんとおっしゃるんですね。身上調査はしなくて大丈夫ですか?」

「……身上調査?」

 思わず声が低くなる。秘書がビクッと肩をふるわせた。

「……すみません。いえ、でも」

「不要だ」

 秘書はまだ何か言いたそうだったが、ぎろりと睨むと慌てたように口をつぐんだ。
 ……いや、落ち着こう。
 普通の反応だ。幾ら両親がどんな相手で良いと言っていても、会社のイメージが大きく下がるような相手を警戒するのは当然と言えば当然だ。
 今時、身上調査もないだろうと思うけど、実際問題、今でも一部では当然のように行われているのも事実だし。

「お医者さんなんですもんね。必要なかったですね」
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