シンガポールから出られない!
「……すごい!これがセレブの使うベッドなんだ……」

まるで、巨大なマシュマロの上に寝ているかのように布団もベッドも柔らかく、心地がいい。日本に帰った時、自分の部屋のベッドで眠られるか心配になってしまうほどだ。

布団が柔らかいせいか、初めての海外で興奮して疲れたせいか、瞼がどんどん重くなる。まだベッドに入って数十秒だというのに、私の意識は夢の中に落ちていった。

「……」

目を覚ました時、窓の外はまだ真っ暗だった。時計を見ると深夜二時を過ぎたばかりだ。

「何で起きちゃったんだろ」

いつもなら朝までぐっすり眠ってしまうのに、何故か目が冴えて眠れそうにない。仕方がないので風にでも当たろうと思い、バルコニーに出る。すると、リシさんが門に向かって歩いているのが見えた。リシさんはそのまま門の外に行き、夜の街へ消えて行ってしまう。

「えっ……」

夜に外出するのは危険だとあれほどいっていたのに、自分は出て行くの?リシさんは社長だし、誘拐される危険性もあるんじゃ……。そう考え始めると居ても立っても居られず、パジャマの上に薄いカーティガンを羽織り、リシさんの後を追いかけた。
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