エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい


幸せそうな彼の笑顔を見て、優杏はホッとした。

根も葉もないことだったとはいえ、もし夫が会社で不倫していたなんてくだらない噂を妻が耳にしていたら面白くなかっただろう。

夫婦で旅行しているなら、溝口夫妻は円満そうだ。

「実は……妻が、君に会いたがっていてね」
「え?」

溝口の妻に会いたいと言われる理由は浮かんでこない。

「これから時間があるかい?」

溝口はかつての噂のことなど、気にもとめていないように軽く誘ってきた。

「ええと……今日はちょっと急いでいて」
「なら明日、私たちが泊っているホテルに来てもらえないだろうか?」

彼はどうしても、優杏と妻を合わせたいらしい。

「わかりました」

優杏はホテルの名を確認し、明日の時間を決めてから溝口と別れた。

(奥様からなんの話だろう)

噂について聞かれたらどうしようかと、会う約束はしたものの優杏は少し後悔していた。

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