OL 万千湖さんのささやかなる野望
「お疲れ様ですっ」
と万千湖は慌てて立ち上がる。

 まだ若いが課長様だ。

 立ち上がり頭を下げようとしたのだが、まだ冷蔵庫の棚にのり切っていなかったお弁当がごとりと落ちる。

「あーっ」
 逆さにっ、と慌てて、万千湖はそれを拾った。

「あれ? お弁当?
 君も昼休み、お昼食べられなかったの?」
と問われ、

「ああいえ、皆さんにランチに誘っていただいたので。
 これは夜食べようかと」
と答える間、なにかが聞こえていた。

 グーグーとお腹が鳴る音だ。

 雁夜が笑顔で、
「そうなんだ?
 僕は昼にお客さんがあって、食べそびれてね」
と話している間もずっと鳴っている。

 あまりの気にしないっぷりに、別の人のお腹が鳴っているのだろうかと思ったが、他に人はいなかった。

「……雁夜課長、お弁当食べます?」

 万千湖は思わず、そう訊いていた。
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