OL 万千湖さんのささやかなる野望
 すると、雁夜は、
「ありがとう。
 じゃあ、今度、なにかお礼するよ」
とご機嫌な顔で言ってきた。

「いや……ほんとに結構です。
 まずかったら、残してください。

 ではでは」
と行きかけ、万千湖は戻る。

 喉渇かないかな? と気になったからだ。

 開いたままの戸口からひょいと覗き、
「お茶淹れましょうか?」
と訊く。

 雁夜はウキウキした様子でお弁当を開けているところだった。

「大丈夫。
 飲みかけのペットボトルのがあるから。

 あっ、ちっちゃなオムライスッ」

「……冷凍食品です」

「えだまめもあるっ」

「冷却剤がわりの冷凍食品です……」

「ミートボールもっ」

「……冷蔵のレトルトです」

「卵焼きがっ」

「あ、それは私が作りました」
 ちょっとホッとして万千湖は言った。

 彼が喜んだものがみな、冷凍食品だったので、申し訳なくなってきたところだったからだ。 
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