OL 万千湖さんのささやかなる野望



 見学会には、近所の人たちや普通に見学の人たち、親や親戚なんかもやってきて賑やかだった。

 だが、
「いや~、楽しい見学会でしたー」
と笑顔で清水たちも帰ってしまい、ガランとした玄関ホールにふたり取り残される。

 万千湖は家の中を見回し、訊いてみた。

「課長。
 ここはほんとうに私たちの家なんでしょうかね?」

「……自分の家じゃなかったら不法侵入だろ」

「なんか夢のようですよね。
 あのとき、たまたま見た素敵なモデルハウスに、たまたまお見合いで出会った課長と、たまたま住んでるとか」

「途中までは、たまたまだが、家を買って、住むまでの過程はたまたまじゃなかったろ」
と言われる。

 確かに。
 結構、大変な道のりだった。

 ……それにしても、なんかみんないなくなって、シンとなったら、ちょっと緊張してしまうのですが。

 この家にも、課長にも、と万千湖思う。
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