OL 万千湖さんのささやかなる野望




 ……ふつつかものですがって、なんだ。

 お前は俺のところに嫁に来たのか、と思う駿佑は、そうは見えなかったかもれしないが、実は、ちょっと動揺していた。

「布団、とりに行っとくか?」

 二人分の布団を車にぎゅうぎゅうに詰め込んできていた。

「あ、そうですね。
 それから一緒にお茶でもどうで……

 あっ」
と万千湖は叫んだ。

「そうだっ。
 あのシャンパンッ。

 呑みましょうかっ?」

 家が当たったとき、清水にもらったあのシャンパンだ。

「そうだな。
 ……いや、今日はやめとくか」

 自分がそう言うと、万千湖も、
「そうですね。
 引っ越し、ほんとは明日ですし」
と微笑む。

 いや、そうじゃない、と駿佑は思っていた。
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