好き 2
神に愛された者
ねえ、もしも。
もしもね。
大好きな人と離れないといけなくなってしまったら、貴方はどうする?
諦める?それともなんとしてでも近くにいる?
私はね、正直どっちにしたら良いのかわからないの。

私は今、生徒会室の椅子に座ってお茶を飲んでいる。
だって呼ばれたんだもん。

「花嶺様。」

誰かが話しかけてきた。誰だっけ?確か・・・紫葉千冬クン?
副生徒会長の。

「深雪とお呼びください。紫葉様。」
「・・・それではお言葉に甘えて。深雪、僕のことをご存知ないのですか?」

突然なんだろう。
ご存知ないのですかって言われても・・・。

「日本を支える、名家の代表例の一つである歴史ある紫葉家の跡取り様ですよね?」
「そういう事を言っているのでは有りません。」
「・・・・では、どういうことでしょうか。」
「7年前のことです。僕の顔に見覚えは有りませんか。」

7年前、と言ったら私が小学部に通っていた頃。
知らない。

「すみません。覚えていません。私達、どこかで会いましたでしょうか?」
「・・・本当に、覚えていないのですね。」
「?」
「僕は、あの頃から貴方に憧れていました。」

私に・・・憧れる?
なんで?

「そうですか。」
「でも、貴方は、学年順位で4位未満の者たちのことは認知していなかった。」
「・・・そうかも、しれませんね。」

私が認知しておくべきと考えているのは、4位以上の成績を持つ人達だけ。
だって、頭が悪いのなら付き合う必要がないと教えられてきたのだから。
そう、天埜家当主である天埜征弘様に。

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