公認ラヴァ〜それでも愛してる〜
二人は同じ電車には乗ったが車両は別々だ、目的の駅に降り立つと女性は小走りになって賢也の腕に自分の腕を絡めていた。

分っていたことなのに、覚悟をしたつもりだったのに胸が痛い・・

心臓をわしづかみされているようだ。

駅を出て商店街を抜けていく。
児童公園の脇を歩いていると松崎さんが肩を抱いてきた、驚いて顔を見ると
「見通しが良すぎて、向こうが振り向いたら丸見えでしょ?カモフラージュ」
そう言ってウィンクをした。

ウィンクなんてマンガの世界のよう。でも、松崎さんがするとなんとなくチャーミングに見える。
といっても私よりも一回りも年上だけど。

この先にホテルなんてあるんだろうか?
疑問に思いながら歩いていると松崎さんに腕をつかまれ塀の陰に引き込まれた。

「マンションに入る」

松崎さんの視線の先を見ると二人は4階建てのマンションに消えていった。

マンション・・・
「賢也は彼女の部屋に行ったということ?セカンドハウスではないよね?」

呆然としながらも松崎をみると端末を取り出すと耳にイヤフォンを取り付けながら私の疑問に答えてくれた。

「あそこは大森恵美さんが賃貸している部屋です」

「そう・・・」

「盗聴器の感度もいいようだ。俺はしばらくここにいるけど有佳ちゃんはどうする?というか、先に帰ってないとマズくない?」

「あっ、そうですよね。はっきりと答えが出たので私は帰ります」

「その方がいい、送っていけないけど大丈夫?タクシーを拾えるならタクシーでいいからね。領収証をもらってくれればいい」

正直、ここに居続ける勇気もないから、松崎さんの提案にのることにして帰宅した。
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