禁忌は解禁された
「俺はつい半年前まで……血が繋がってると思っていた姉貴と“禁忌”を犯そうとしていた男だぞ!
そんな俺に、誰が父親とかは関係ねぇんだよ!!?」

「組長…」
銀二が、颯天を見る。
「まぁ、そうだな!あの親父さんがお袋さんを孕ませたのは事実だったとしても、何かちゃんとした理由がありそうだよなぁ!」
暁生も納得したように言う。

「真実は違うはずだ、きっと………」
銀二も知衛を見据える。

「そうだな!神龍寺 颯太は、俺達神龍組の偉大なオヤジだ!」
町野が言い、百田も大きく頷いた。


「………フッ…!!!」
知衛が突然、噴き出した。
そして、知衛の笑い声が部屋に響く。

「なんだよ!?」
「さすが!!神矢の息子だな!
神龍組の連中らしいなぁー!」

「うるせーよ!!」

「でもよ━━━━━━━」
笑っていた知衛の表情がフッと消え、颯天を見据えた。


「お前達の、大切なお姫様はどう思うかなぁ~!」


「は?」
「まさか!!」
「姫に話し━━━━━━━」

「自分の父親が愛する颯天の本当の父親を裏切り、尚且つ自分は、犯されてできた子どもだと知ったら………!」

知衛が部下に目で合図すると、部下がテレビをつけた。

そこには、一颯と井田がいた━━━━━━━━

「志乃達を返してください!!」
「わかってますよ、お姫様」
「早く、志乃さん達を返せ!!」
知衛の部下は、志乃達を人質にして一颯を呼び出していた。

「はいはい…」
部下の一人が合図すると、志乃、実子、可奈が男に連れられて出てきた。

「「「一颯!!!」」」
「志乃、実子、可奈!!」
「一颯ーーー!」
「もう大丈夫だよ!」
四人は抱き締め合う。

「ごめんね!私のせいで怖い思いをさせて!
ごめんね!」
泣きながら一颯にしがみつく三人に、一颯は何度も謝る。

「井田くん、志乃達を連れて出て!」
「え……姫…?」
「私は一人で大丈夫!」
「ダメです!!」
「私も、知衛組の方とは一度話したかったから。
私がいればいいですよね?」

「は?井田にも聞いてもらいましょうよ!真実を……!」
「え………」

男は、颯天達に話したことと同じことを一颯に話した。

テレビ画面に、固まってしまった一颯と井田が映っている。


「何故……姫にそんな事を………」
銀二が苦しそうに呟く。

颯天も怒りで、震えていた。


「━━━━━━━━それは違います!」
そこに、一颯の綺麗な声が響いた。

「姫?」
井田が一颯に向き直る。


「母が、颯天の本当のお父様の恋人だったことは、真実です。でも父が母を“無理矢理”乱暴したのは、真実ではありません」
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