禁忌は解禁された
何か、一颯の心が癒される物をプレゼントできたらと考えていた。

「やっぱ、ハーブティだよなぁ~」

「あ、井田だ!」
「ほんとだ!」

「あ…」
宮原と、伊敷がいた。

「なんか、井田とハーブティって……」
「似合わねぇ……」

「うるせぇ…消えろ」
睨み付ける、井田。

「おー怖っ(笑)」
「つか!一颯ちゃんの前とは、全くの別人だな(笑)」

「逆だろ!一颯ちゃんの前での井田が、別人なんだよ(笑)」
「あ、そっか!確かに」

二人の会話を、ただ睨み付けて見ていた井田。
無視をして、再度ハーブティに目を向けた。


「一颯ちゃんに、プレゼント?」
宮原が顔を覗いてくる。

「は?」
「ん?そんな表情(かお)してたから」
「どんな顔だよ!」

「優しい顔」
「え?」

「“あの”井田に、こんな優しい顔があったなんてなぁ」
伊敷も反対側から、顔を覗いて言ってきた。

「俺の方が以外だった」

「は?」
「姫とお前等が、ダチだったなんて」

「まぁ…最初は、太賀を通じてだったがな!」
「俺等、高校ん時悪いことばっかしてただろ?
その事、大学でもすぐ広まってさ!
一颯ちゃんは、そんな俺達に“過去じゃなくて、今からの二人と仲良くなりたい”って言ってくれたんだ」

「姫が、そんなことを……」

「一颯ちゃんも、神龍の娘って広まって辛い思いしてたんじゃねぇかな?」
「それに、太賀や深澤さんが目を光らせてたしな。
益々、近寄る奴いなくて……まぁ、二人の目を盗んで口説く奴はいたけどな!」

「あんないい女、いねぇよ」
「だな。可愛くて、優しくて……太賀が羨ましかったなぁ」

「あぁ…そうだな……」

「「………」」
宮原と伊敷が、ジッと井田を見る。

「なんだよ!」
「好きなんだ?一颯ちゃんのこと」
「は////?」
「わかりやすっ!」

「うるせぇ…消えろっつってんだろ!」

「へいへい!」
「あ、一颯ちゃんにプレゼントするなら、これがいいよ!」
「は?」
「大学ん時、よく買ってたから!」
「確か、死んだお袋さんとの思い出の茶葉だ」

「「じゃあな!」」
宮原と伊敷が、軽く井田の肩を叩き去っていったのだった。

「………」
井田は、無言で二人の後ろ姿を見送ってその茶葉の入った商品を取った。


そして、足早に車に向かっていると………

「ちょっと!離してください!」

道加が、ナンパされていた。
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