禁忌は解禁された
救急車で運ばれた、一颯。

手術室の前の椅子に項垂れた颯天が座り、銀二、井田、その他組員数人が床に土下座をして謝っていた。

「「「組長!!申し訳ありませんでした!」」」

「もう…いい。
一颯だったら“大丈夫だよ”ってしか言わねぇだろうし。
……………それに、俺も守れなかった。
それどころか、俺が守られるなんて……」

「組長…」

「ただ……」

「はい」

「次はない」

「もちろんです」

「俺も、お前等も……」

そこへ、タタタッと駆けてくる足音がして暁生や町野達が駆けつけてきた。

暁生は颯天達の所に着くなり、銀二の胸ぐらを掴み壁に押しつけた。

「暁生!!!?」
井田達が、止める。

「なんで!?あんたがいて、一颯が傷ついてんだよ!!?」
「すまない…」
銀二は、抵抗することなく項垂れていた。

「暁生!!」

「颯天もだよ!!?お前…好きな女も守れねぇのかよ!!?」
「暁生…」

「一颯は、神龍の“宝物”なんだろ?
だったらなんで、傷つけるんだよ……!!?」
暁生が、力なく呟いた。


そこに、手術が終わった一颯がストレッチャーで運ばれてくる。

「一颯!!?」
「「「姫!!?」」」

「まだ、眠ってます。
幸い、急所は外れてましたし、傷口も浅かったのでもう心配はいりません。
あと、応急措置も的確でしたしね!」

医師の言葉に、颯天達は安堵した。


特別病棟に運ばれ、24時間体制で見守ることになった。
「んん…」
一颯が目を覚ます。

「一颯!!」
「「「姫!!」」」

「颯天…?あれ?」
「一颯、ちゃんと生きてるよ!」
「姫!」
「銀くん」
「姫!!」
「真紘くん」

「一颯!!」
「暁生くん?あれ?私、雨と雷に連れて行かれなかったの?」

「あぁ!親父と母さんが、助けてくれたんだよ、きっと……!」
「そっか!」

「姫」
「ん?」
「「「申し訳ありませんでした!」」」
銀二達が、頭を下げる。

すると一颯はやっぱり“大丈夫だよ”と微笑んだ。



「━━━━でも、なんで…俺を庇ったの?」

銀二達が、病室を出ていき颯天と二人になる一颯。
ベッド脇に腰かけた颯天が、一颯の頭を撫でながら言った。

「覚えてない。身体が勝手に動いてたから」

「………ったく…二度とやめろよ!」

「でも、雨と雷が誰かを連れてくってなら、私が逝く。
もう…見送るのは、やだ!
…………特に、颯天を見送るのだけは……」

「それでも!!俺だって、さっきは生きた心地しなかった」

「颯天」
「ん?」
「私を置いて死なないで」
「え?」
「颯天が死ぬ時、私も連れていって」
「一颯…」

「お願い!!!もう…二度と、あんな思いは嫌なの……!」

一颯は颯天のジャケットを握りしめて、懇願するのだった。
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