臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。

出来ないよ『お願い。少しだけ,考えてあげて』

朝,重たい目を開けると,スマホに通知が来ている。

この色は…LI⚪Eだ。

開いてみると,昨日登録し直したばかりの菖からだった。

戸惑いに心臓が冷えていく。



『今日の放課後,空いてる? たい焼き食べに行きたいんだけど,付き合ってくれない?』



彼の低い声と,昔見た笑顔が脳裏を過る。

菖は,ほんとに…



『たい焼きって…菖どこ高だっけ』

『多分澪から1番近い高校』



既読も返信も,予想より何倍も早い。

こんなにすぐ返ってくるなんて…私が気付くのを待っていたのだろうか。

夾くんに映画に誘われた時を思い出す。

やっぱり,断った方が良いのだろう。

……。

私は先に,支度を済ませてしまうことに決めた。
< 111 / 262 >

この作品をシェア

pagetop