【完結】橘さんは殺された。


「気になったのは、離婚した理由です」

「離婚した理由?」

「はい。……離婚した理由が、ちょっと引っかかって」

 普通の離婚と言えばそうかもしれないが、俺にはちょっとそれが引っかかった。

「どういうことだ?藤嶺」

「ここ見てください。離婚理由の欄」

「どれ。……ん?」

 その理由を見て瀬野さんもおかしいと思ったのか、眉間にシワを寄せた。

「どういうこと、ですかね」

「お前これ、まさか……。いやでも……考えてみたらあり得ない話じゃない」

 瀬野さんの表情が一気に変わった。

「と言うと……?」

「離婚した理由がもし本当にこれだとしたら、母親はそれを知っていて黙認していたということになる」

「え、黙認していた……?」

 いや……瀬野さんの言う通りかもしれない。 もし本当にそれが本当だとしたら……。

「じゃあ……。橘さんはもしかして……」

 俺のその言葉に、瀬野さんは少し黙り込んだ。

「あの父親は、橘智夏が自分の娘ではないと知っていた可能性が高いな。……だからそれを知って、橘智夏に対して好意を抱いた、一人の女性として。 だから彼女に性的暴行を加えていた」

「っ……性的、暴行……」

 それってまさかーーー。

「恐らくここに書いてある通り、離婚した理由が娘の父親のことで揉めていたということであれば、説明が付く」

「そんな……」

 これは知りたくもない事実だった。まさか橘さんの父親が、橘さんに性的暴行を加えていたなんて……。
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