【完結】橘さんは殺された。


「……そうか」

 明日は橘さんの命日だった。

「お前がここまで真相を掴んできたんだ。……お前の手で、終わらせてこい」

「……瀬野さん」

 瀬野さんの言葉は力強くて、そして勇気にもなった。

「課長からの伝言だ。明日は有給消化だ、だってさ」

「……はい。ありがとうございます」

 俺は橘さんのために、そして俺自身のために、明日父親の所へ向かうことにした。

「あ、どうでした?繊維片の鑑定」

「ああ、あの繊維片はストールだった」

 そう話した瀬野さんは、出来たてのカツ丼に手を付け始める。

「ストール?もしかして、凶器ですか?」

「まだ分からない。……が、鑑識によると、その可能性は高いらしい」

 瀬野さんはカツ丼を大きな口で頬張り始める。

「凶器は見つかってなかったんですよね?」

「ああ、持ちさられてたからな」

 じゃあその持ちさられたストールが凶器で間違いないのか……。

「ストールは市販で売られてる物だった。どこにでも流通してるものだから、そこから辿るのは難しいだろうってさ」

「そうですか」

 カップ麺を食べ終えてゴミ箱に捨てた俺は、自販機でお茶を買った。

「あ、瀬野さん。被害者のスマホの通話記録を調べましたよ」

「お、で? 何か分かったか?」

「被害者が最後に通話していた相手は、被害者の母親でした」

 俺は通話記録をコピーした紙を瀬野さんに見せた。

「母親?」

「はい。母親に来週帰ると言っていたそうです」
< 46 / 57 >

この作品をシェア

pagetop