クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 レーニスは王都にいるマーサに心の中で問いかける。
 あのときの恩返しはできていますか、と。今、自分は愛する夫が隣にいて幸せです、と。
 そう思っていたから涙が溢れたのだ。だから、悲しくて泣いているわけではない。

 レーニスが深く息を吐いたことで、デーセオは気付いたのだろう。
「落ち着いたか?」
 彼は優しく微笑みながら、レーニスの涙を拭う。

「はい。みっともないとこをお見せして申し訳ありません」

「いや。俺たちは夫婦だからな。みっともないところも、恥ずかしいところも、変なところも。全て見せてもらってかまわない」

「へ、変なところって……」
 デーセオなりの思いやりのつもりの言葉なのだが、それがレーニスにはうまく伝わっていないようで。そんな彼女を困らせたくなったデーセオは、耳元でこっそりと囁く。

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