クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「下の書庫にありましたので。読んでおこうかなと思いまして」
 レーニスは勉強熱心だ。それは母親になろうとしている今も変わりはないらしい。
「俺も初めてのことでわからないことばかりだが」
 とデーセオが言いかけてやめたのは、続く言葉が見当たらなかったからだ。何も子供のことをレーニスだけに任せようとは思ってもいない。だが自分の立場を考えると、妻とこれから生まれてくる子ばかりにかまうのもどうかと思う。だからこそ、続ける言葉が見つからない。何をどこまでやったらいいのか、さっぱりわからない。
 彼女はニッコリと微笑んだ。
「はい。デーセオ様にしてほしいときがあるときは、遠慮なく言います。ですから、デーセオ様も、何か私に聞きたいことがあるときは遠慮なくおっしゃってください」
 やはりレーニスは鋭かった。デーセオが聞きたいことを持ち合わせていることに気づいていたのだ。
「じゃあ、今でもいいか? 君に聞きたいことがある」
「はい、どのようなことでしょう?」
「その。俺は最近『よいしょ』と言っているのか?」
 なぜそのようなことを聞かれたのか、レーニスには心当たりがないようだ。小首を傾け、不思議そうにデーセオを見上げてくる。
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