偽装結婚の行く末
いくらクズとは言え、平手打ちは良くなかった。
しかもここはオフィスの会議室。
誰かに見られてたら大変な事態になる。

頭に上った血が一気に引いて、あたしは逃げるようにその場を離れた。


「悔しい……」


廊下に出て小声で呟いたその時、こっちを凝視する総務の遠藤さんがいた。
ウソ……聞かれてた?

目を合わせず足早に距離を取る。
幸い、彼女は話しかけて来なかった。


「お疲れさまでーす」

「お、お疲れさまです」

「……あら、白井さんどうしたの?」

「いえ、大丈夫です」


しかし、油断してこっそり泣いてたらゴシップ大好きな事務のおばさん2人組に見られてまじで最悪。
遠藤さんは噂とかしなさそうだから大丈夫だけど、あのおばさんたちは絶対言いふらす。

あーあ、最悪。
その日はいろいろ考えて仕事に身が入らなかった。
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