僕らは運命の意味を探していた。
 そして一岡は僕の去り際にこう言った。

「……もしかしたら、一番の厄介者は私なのかもしれないな。」

 先程とは比べ物にならない程、かすれた声色に変わっていて、一岡は背中を向ける僕に言った。

「……もしかしてじゃない。確実にだよ。」 

 僕はそう答えると、一度も後ろを振り返ることなく、僕は屋上を後にした。

 僕らはもう、死ぬほか道はなさそうである。脱出方法がない以上、方法はそれしかなかった。

 僕は『生きること』を半ば諦めていた。

 僕らは屋上の扉をくぐり、階段を降りていく。

「あのさ……、少し一人にさせてくれないか。あんな事はもうしないと誓うから……。」

 僕はそう二人に頼み込んだ。気まずくて顔すら合わせられないまま、僕は先を歩いていた。

「分かった……。」

 二人はそう簡潔に了承してくれた。僕は二人に感謝の気持ちしか持っていなかった。

 二人を残し、階段を駆け下りると、校舎を後にして、あの高台に向かった。

 僕はもう、どうなっても良かった。

 どんなに危険を冒したって、現実世界の僕にガタが来れば、僕はいずれ死ぬ。

 だからもう何したって構いやしなかった。

 あき。どうしようもない幼馴染でごめんな。

 もうちょっと、僕がしっかりしてれば、君を悲しませることも無かっただろうに。

 沢山苦労を掛けたと思う。

 だから最後に、本当にありがとう。

 また、天国であったら沢山笑って、恋の続きをしよう。

 結婚して子供が生まれて、時には喧嘩もするけど、いつでも明るい家庭を作って。

 老後にはさ、のどかな場所に住みたいな。

 ちょうど、今いる場所みたいに、緑がたくさんあってさ。

 自給自足の生活とかも楽しいと思うな。

 でも、現実世界ではもう君には会えない。

 いつまでここにいるのかも分からないし、どうやったら死ねるのかも分からない。

 あき。僕は今、君と誓ったベンチに座っています。

 君との誓いを果たせなかった事、本当に申し訳ない。胸が痛くて仕方ないよ。

 僕の役目は終わった。やるべきこともやった。足掻くだけ足掻いた。

 だから、もう僕がここにいる意味は無い気がするんだ。

 僕は希望と懺悔を繰り返して、高台のベンチに腰掛けながら、時間経過を感じていた。

 前まで出現していた黒い渦は、大人しくなったようで、過去最大の絶望感を抱く自分でさえ発現はしなかった。

 もしかしたら、これはゲームマスターが僕らに向けた敗北宣言だったのかもしれない。

 僕は少しだけ誇らしい気持ちになっていた。

 僕は沈む夕日を眺めていた。あの頃を思い出しながら、僕は感傷に浸っていた。

 ふと僕の涙袋から、一縷の涙が再び零れ落ちた。

 様々な感情が錯綜する涙には、今までの全てがこもっているように感じた。
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