僕らは運命の意味を探していた。
 だから僕には、前を向いて歩くしか道はない。

 彼らとの思い出を胸のアルバムにしまって、新しい思い出で記憶を塗り替えようと思った。時々アルバムから記憶を取り出して、過去に浸る事もあるだろう。

 しかし、今は前進だけを目指して、僕は行動していこうとあの二人に誓った。

 まずは、自分が学校までに体調を戻すことが先決なのだろう。僕はそう確信した。

 現在、僕らは車の中で談笑していた。

 それは、退院三日前に、隼人からこんな提案があったからである。

「一岡とアツの墓に行かないか?」と。

 とりあえず僕は、隼人に行く旨を伝えた。

 しかし、行ったところで、僕らの声が彼らの元に届く可能性は、既に皆無だった。

 じゃあ、なぜ隼人がこんな提案をしたのか。それは、単純に僕がこの話をしていなかったからだ。

 恐らく、『お墓で話したことが相手には届く』という事実を、皆んなは簡単に受け入れるだろう。

 しかし、『二人はもう魂ごと消失したんだ』と現実を話したところで、全員聞く耳すら持たない気がしていた。

 これが単なる決めつけになるかもしれない。

 でも、人間は都合に良い話を聞き入れる生き物なのだ。

 だからこんな実感のない話をしたところで、その結果を迎えることが目に見えていた。

 別に、見下しているわけでは無い。

 ただでさえ現実味の無い話をしている訳だから、これ以上かけ離れた趣旨の話をしても、流石に信じてはくれないような気が、僕にはしたからだ。

 この旅行中、僕は隼人に罪悪感を抱きながら過ごすことになるだろう。僕にはそんな未来が見えていた。

 二人のお墓までは、僕の家の車で向かうようだ。

 助手席に隼人が座り、後ろに紗南とあき、更に後ろには僕と司令官が続いた。

 道中、少し込み入った話をしていた。

「司令官と紗南の両親は、二人のいじめについてどう思ってたんだよ。」

 いきなり車の中が凍り付いたのが分かった。

 それは、僕がノンデリカシーの質問をしたからだ。でもそんな雰囲気を出してでも、僕は聞いておきたかった。

「何で、今聞くんだよ……。」

「ごめん……忘れてた。これだけ、話に上がってこなかったから、もしかしたら二人には、話したくない事情があったのかもしれないって思ってたけど、流石に我慢できなくなった。ごめんな……。」

 僕はそう言って、司令官の顔をそっと見ると、なぜかキョトンとした表情を浮かべていた。

「なんで、こんな空気になってんだよ。別に今も普通に会社員やってるよ二人とも。そうだよな、紗南?」

「うん。家族も同じような感じ。別に同情されるような状態じゃないよ?」

 二人は、表情を変えずにそう言った。心配した僕が馬鹿みたいだなと、素直に感じた。

「なんだ……。もっと早くに聞いとくんだった。」

「それはそれで、もう少し気を使ってくれよ…………。」

 司令官は肩を落としながらそう言った。勿論冗談だと分かっていた。

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