僕らは運命の意味を探していた。
 俊也が発見された頃……。

 ウチ、楠奏は焦っていた。

 もし来海の言う通りなら、一刻を争う事態だから。

「管理人さん、急用なの、お願いだから急いできてくれないかな。」

 ウチは急かすように言った。管理人さんは、慌てた様子で鍵を持って来てくれた。

 このマンションの管理人さんは、白髪で中央部の髪の毛の姿は無く、黒縁の眼鏡をかけた七十代くらいのおじいさんだった。

 そんな管理人さんは肩で息をしながら鍵を渡してくれた。

「……管理人さん。救急車お願い。」

 ウチは靴を脱ぎ、走ってリビングのソファで寝ている紗南を見つけた。

 脈の様子から生きているようだが、意識が無い。ウチは管理人さんに救急車の手配を促した。

 一人になった部屋で、ウチは辺りを見回してみた。

 そこには、自殺を図ったような形跡や他人に殺意を向けられた痕跡は一切無く、不自然過ぎるほどに何かが起きた証拠がなかった。

 しかし一つだけ気になるものを見つけた。
 
 『見ておけよ。これから地獄を見せてやる。』か……。

 何なのよこれ……。誰がこんな事……。

 白いシンプルなレポート用紙のようだが、どこか赤く血塗られた感情が湧き上がってきているように見えた。

 恐らく送り主が何かしらに関わっているはずだが、宛名と紗南宅の住所以外は記載されていない。これ以上ウチの探りようが無くなったのだった。

 幾許か時が立ち、二人の救急隊員によって紗南が運ばれた。

 運ばれる紗南の様子に、どうしても一昨日までの彼女を重ねることが出来なかった。

 ウチはこれからどうしたらいいのだろう、病院へ直行するのか? 

 でも佐南の連れて行かれた病院名が分からない現状でどうやって……。

 ウチは八方塞がりの現状に手の出しようがなかった。
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